ペット全般

病は昼夜を分けません 急な病気にご用心!!

病は昼夜を分けません 急な病気にご用心!!

人間でも、動物でも急な病気や大怪我、それが夜中や明け方に起きた場合、あわてますよね。
その原因が分かっていて、経過の予測が立てられる時は、飼い主の皆様も冷静な対応が取れますが、突然苦しみだしたり、けいれんしたり、嘔吐が続いたり、出血が止まらないような時には、パニックに陥るのは当然のこと。「ペットクリニック」の看板を掲げている以上、夜中に電話が鳴るのも覚悟の上です。

過去に、当院で深夜など時間外に対応した病気・外傷では、
・お産関連(帝王切開術など)
・お産後に生じた母体の低カルシウム血症(筋けいれん)
・人間用の薬剤や色々な異物を食べて(飲んで)しまった
・交通事故
・お風呂(熱湯)にニャンコが落ちて大火傷
・ケンカによる咬傷
・ニャンコがマンションのベランダから落ちた
・ハチやムカデなどの毒虫刺され
・小鳥を踏んでしまった
・熱中症
・糖尿病治療のインスリン注射に伴う低血糖発作
・てんかんによるけいれん発作
・各種心臓発作
・呼吸困難
・胃捻転
・腸重積による苦悶
・おしっこが出なくなって苦しそう
・原因不明の虚脱・突然死
などがあります。

人間の救急病院に当てはめると、一次救急(入院の必要がない程度)、二次救急(入院を必要)から三次救急(集中治療室での処置を要するもの)まで実に様々。ところで、私が、動物病院を開業した27年ほど前は、どちらの動物病院も急病や怪我の動物が出た場合には、「夜中でも明け方でも診るのが当然」と言う風潮でした。
でも、最近は夜間救急対応を引き受ける動物病院はずい分少なくなりましたね。
① 夜間救急専門病院が出来て、一般開業獣医と役割分担が確立しつつある
② 病院と自宅住居が別の場所(例えば貸店舗で開業)にあり、夜間は無人になる場合が増えた
③ 獣医師が一人の病院では、そもそも体制的と言うか体力的に適切な処置が出来ない

ことなどが、一般開業医が夜間救急を避けるようになった要因だと思われます。当院でも一時期、時間外・夜間救急を全て夜間救急専門病院に紹介することを検討しました。
しかし、それが必ずしも飼い主さんのニーズに合わないことが分かり、以前同様に当院でもお引き受けするようにしています。
救急専門病院のレベル(人・設備など)が急速に向上しているにもかかわらず、「飼い主さんのニーズを満足していない」理由を実際に受診された飼い主さんに訊ねると、

① 基本的に初診になり、各種の検査を重複して行うので、金銭的負担が大変大きくなる
② 夜間救急専門病院までの距離があり、治療開始までの時間がかかり、「救急」にならないことがある
③ 獣医師は交代勤務なので、何時も良い獣医師にあたるとは限らない

などが浮かび上がってきています。
そんな訳で、ホームドクターとして健康管理をさせていただいているワンコ・ニャンコを対象に、時間外救急対応を続けている次第です。

「いざと言う時に安心です」

こうおっしゃっていただけることが、私や夜間担当獣医師(ダンナです)にとってのモチベーション。ここで、皆様にお願いがあります。
前のリストにあげた急な病気・怪我は確かに救急対応が必要なものばかりです。
しかし、中には、
「昼間から具合が悪かったが様子を見ていた。夜になって、容態が悪化したので診てほしい。」と言うCaseもかなりの頻度あるのです。

少し早めに(診療時間内に)来院いただけたら、こちらとしてもスタッフ数など、より充分な体制で治療に当たれますし、「時間外診療費」も発生しません。
「急病と言う名の病気」の予防であり、何よりも、動物たちのためですからね。

飼い主の皆様へ 遺残糸膿瘍にご用心!!(類縁疾患の無菌性結節性脂肪織炎の情報もご覧ください)

飼い主の皆様へ 遺残糸膿瘍にご用心!!(
飼い主の皆様へ 遺残糸膿瘍にご用心!!(

「飼い主の皆様へ ご用心!!」と書くのは全くもって厚かましい話です。
なぜなら、「遺残糸膿瘍」は手術のときの縫合糸が原因となって起きる、一種の医原病で、飼い主の皆様には注意することも、予防もすることが出来ないものだからです。しかし、人間でも、動物でも手術後、ある頻度で必ず生じるものであり、皆様にとりましても、この病気について知識を持つことは有用だと思いましたので、この文書を作成しました。

この病気によく似た、「無菌性結節性脂肪織炎」についても言求しましたので、併せてご参照ください。

遺残糸膿瘍ってなに?:
例えば、標準的な不妊手術では、体の外側から、お腹の皮膚、皮下組織、筋肉(腹膜+腹筋)と順に切開していきます(開腹)。
ついで、卵巣・子宮を摘出し、それが終わると「縫合」と言う段階に入ります。
縫合は、体の内側から筋肉(腹膜+筋膜)、皮下組織、皮膚と順に縫合します。
皮膚を縫った糸は後に抜糸しますし、皮下組織は溶ける糸(吸収糸)を用いるので体内に残ることはありません。
しかし、吸収糸以外の糸で腹筋や皮下組織を縫合した場合、抜糸することが出来ず、そのまま体内に残ります。これを遺残糸「いざんし」と言います。

遺残糸は、稀に、アレルギー源になり、アレルギー反応炎症かゆみ掻き傷感染と進み、傷跡から少量の膿(うみ)が出ることがあります。この状態を「遺残糸膿瘍」とか「縫合糸膿瘍」といい、肉芽組織の増殖が顕著なものは「遺残糸性肉芽腫」と呼ぶこともあります。
手術後、1年以上経過してから起こることもあります。

遺残糸膿瘍が起こる原因は?:
縫合糸の問題:動物の手術の際、合成糸は過去最もよく使われる手術材料でした。特に開腹手術時にはよく使われていました。

しかし、合成糸の特徴(欠点)として、いつまでも体内に残りつづけ、異物反応(アレルギー)を起こす場合があること、感染源になることの2点があります。合成糸は従来多用されていた、絹糸と比べ異物反応を起こし難い素材ですが、それでも稀にこの問題を起こします。絹糸や合成糸のような体内に残らないはずの溶ける糸を使っても、低頻度ですが遺残糸膿瘍は起りえます。糸が完全に溶けるまでには数か月を要しますし、この糸はバラケ易い(ほどけ易い)ので、結紮(結び)を45回繰り返します。結果として結び目が大きくなり周辺組織を刺激→炎症を引き起こすこともあるのです。


②生体側の要因:人間でも動物でも縫合を伴う手術では、手術の大きさや手術の成功,不成功にかかわらず、ある一定の頻度で遺残糸膿瘍は起こってしまいます。アレルギー体質の強い動物や感染への抵抗性(免疫)の低下している動物で起こりやすいとされています。誤解を恐れずに言えば、遺残糸膿瘍になる・ならないは、「アレルギー体質」、「運」の要素が大きいです。

どんな症状?:

手術の跡がぽつんと赤く腫れ,膿が出ること,これが遺残糸膿瘍の症状です。術後何年たっても,思いだしたように「発赤排膿」を繰り返すこともあります。

治療はどうするの?:
基本的には体に残された縫合糸を取らない限り治りません。抗生物質の服用などで、一時的には症状が取れますが、多くの場合は再発してしまいます。軽く麻酔して、傷跡部分にピンセットを入れて遺残糸を切り取ります。
状況によっては、皮膚を再切開した上で腹筋などの糸を取り、皮膚を縫い直すこともあります。
糸を取り、傷の消毒と、抗生物質の投与を行えば、普通は2、3日で治り、再発しなくなります。


遺残糸膿瘍の類縁疾患「無菌性結節性脂肪織炎」について:

外科手術をきっかけにして起こることが多い、良く似た病気に「無菌性結節性脂肪織炎」があります。皮下の脂肪組織での炎症性疾患です。免疫(自己免疫)が関係すると考えられていますが詳細は不明です。ミニチュアダックスフンド種とそのミックスはこの疾患の好発犬種とされており、再発率も高いといわれております。実際にはダックス君に限らず様々な犬種で発生が認められています。

症状は:「体表にしこり(小さな瘤)ができ、だんだんと大きくなり、他の場所にも同じようなしこりができ、しこりがくずれて膿のような黄色い液体が出る」のがこの病気の典型的な症状です。良く似ていますよね?

遺残糸膿瘍との違いは?:

遺残糸膿瘍は本質的に糸の周りの化膿(細菌感染)ですが、無菌性結節性脂肪織炎は自分の脂肪組織を「異物」と勘違いした免疫担当細胞(マクロファージと言う貪食細胞)が攻撃することで起きます。

遺残糸膿瘍は手術創に限局して発生しますが、無菌性結節性脂肪織炎は手術創と離れたところに出来ることもあります。

治療法は?:

幸い、ステロイドと言うお薬が特効的に効きます。ぶり返しが起こらないように、高用量をしこりが完全に消失してからも最低1ヵ月は継続します。これが現在の標準(ベストの)治療です。


鑑別診断はどうするの?:

局所を良く見て、触って調べれば大体区別がつきます。

確定診断は、穿刺し取り出した細胞を染色して顕微鏡で調べます。

見える細胞が、遺残糸膿瘍では好中球と言う白血球が優勢で、周囲に細菌も認めます。

一方、無菌性結節性脂肪織炎では脂肪を食べたマクロファージ(組織球)が無数に見えます。

「無菌性」が示す通り、細菌は認められません。

以上、可能な限り平易に、詳しくご説明致しました。ご不明な点がありましたら、何なりとご質問ください。

風が吹けば桶屋が・・小さな(レプト)螺旋(スピラ)にご用心!!

風が吹けば桶屋が・・小さな(レプト)螺旋(スピラ)にご用心!!
風が吹けば桶屋が・・小さな(レプト)螺旋(スピラ)にご用心!!

暖冬のせいでしょうか、ずいぶん早く吹きましたね。春一番が。
風と言えば、今冬ノロウイルスが流行った時には牡蠣が売れなくなる、また鳥インフルエンザが流行った時には卵や鶏肉が売れなくなるなどの「風評被害」と言う言葉が盛んに出てきましたが、以下は実際の話です。
某所に「プチごみ屋敷?」があって、そこのお庭には生ゴミがそのまま、ぶちまけるように捨てられているそうです。生ゴミを目当てに、ノラニャンコが多数出入りしているとの情報もあります。
さらに、ネズミが繁殖していて、ノラニャンがネズミを咥えている目撃談が寄せられました。
私たち獣医にとって、「ネズミの繁殖情報」には無関心でいられません。
なぜなら、ネズミがレプトスピラ病という伝染病を媒介するからです。
レプトスピラ病はワンコが最も感染機会が多い病気で、下痢(血便)・嘔吐などの胃腸症状に加え肝臓障害(黄疸)、腎機能障害も伴う重篤な疾患です。
ワンコの他、ニャンコや牛、豚など動物のみならず、人間も感染することがある人獣共通伝染病であり、公衆衛生上重要です。
そのため、この病気と確定診断(血清中の抗体検査など)が下された場合には獣医師は保健所経由で厚生労働省に報告することが義務付けられています。
レプトスピラ(leptospira)とは、lepto=微小なspira=螺旋の意味を持つスピロヘータの仲間の細菌で、名前の通り螺旋(ドリル)のようにグリグリと皮膚に入り込んで感染を成立させる小さな病原体です。
このメカニズムで経皮感染もしますし、経口感染もします。
レプトスピラは、ネズミと相性が良いのでネズミの体内で爆発的に増殖し、尿に極めて大量に(1滴の尿中に10万個以上)排泄されます。
ワンコがお散歩のときなどに、ネズミの尿が付いた草むらをクンクン嗅いだり、ペロペロ舐めたりする時に、感染が成立すると考えられています。
ネズミはこの病気を媒介するとともに病気に侵され、衰弱してニャンコに捕食されやすくなり、ニャンコにも感染が起きるわけです。
レプトスピラ病は主に雨の季節に流行しますが、病原体に汚染されたネズミの尿が雨水によって小川流域に拡散することと関係が深いようです。
かって、多くのワンコが外犬・番犬として飼われていた、このあたりでは、毎年数件から10件程度、岩川や恩田川沿いにポツポツと発生が見られたものです。
また、数年前には、保土ヶ谷で中規模な流行が報告されましたが、ここ1-2年はめっきり見なくなっていました。病状は前記の通り大変重いのですが、抗生物質が良く効くので手遅れにならないうちでしたら、比較的速やかに(劇的に)回復させられる特徴があります。
この病気を治療すると、「お陰さまであんなにひどい状態だったのが、メキメキ良くなりました」などと「名医」扱いを受ける場合が多いのです。
この1カ月ほどの間に、「プチごみ屋敷」の近辺で、それらしい症状のワンコ・ニャンコの来院があり、いずれも治療に良く反応してくれました。
これらがレプトスピラ病であった「確定診断」は得られていませんが、注意深く見守る必要があると考えています。なお、皆様に接種することをお勧めしている「8種ワクチン」にはレプトスピラを予防する成分が含まれていますので、ご安心いただけます。
以上、「風が吹けば桶屋が儲かる」ならぬ、「ごみ屋敷出来れば獣医が儲かる」の一席でした。ではお後がよろしいようで。
「風が吹けば桶屋が儲かる」は言うまでもありませんが・・・
  強風で土埃が目に入ると、目を悪くする人が増える。
   目を悪くすると角付けでもしようということになるから、
    三味線が売れる。
      三味線の胴は猫皮だから、猫が減って、鼠が増える。
       鼠が桶をかじって穴を開けると、
        桶屋に注文がくる。
          そして結局、桶屋が儲かる。
ずいぶんと無理なこじつけですね。いずれにしても、ネズミがKey Word。
レプトスピラ病原体↓

飼い主さんもペットさんも 風邪やインフルエンザにご用心!!

飼い主さんもペットさんも 風邪やインフルエンザにご用心!!
飼い主さんもペットさんも 風邪やインフルエンザにご用心!!

飼い主の皆さんから、よく訊ねられる事のひとつに「人間の風邪はワンコ(ニャンコ)にうつりますか?」と言うものがあります。

ご質問を要約すると、「家族が風邪を引いたその後でワンコも咳をしたり、鼻水を出したり、下痢・嘔吐をしたり、家族の風邪と良く似た症状を示すことがある。タイミング的にヒトの風邪が感染したとしか思えない」と言うことです。

同業の獣医の中では、「人間の風邪は犬や猫に感染しません。感染したことを立証するに足る客観的データが揃った症例が報告されていない以上、感染するとは言えません」と答える先生が多い様です。

でも、私は「確実なことは分かりませんが、うつる事もあると思います」と肯定的にお話するようにしています。
その理由は、先のケースの様に時間的経緯や症状の共通性に加え、そもそも「風邪」の原因となる微生物があいまいであるからです。

風邪、感冒、急性上気道炎等と呼ばれる人間の疾患は「風邪症候群」と総称され、「鼻からのどまでの上気道を中心とする部分に、ウイルスや細菌が感染して急激に起こる炎症」と定義されます。

要するに、寒気・だるさ、発熱、のどの腫れ、咳・くしゃみ・鼻水、下痢・嘔吐などの症状が見られ、比較的短期間に治るもので、病原体の特定に至らないものがヒトの「風邪症候群」として取り扱われています。

「特定に至らない病原体」は多くのウイルスや細菌が、混合感染した状態が想定されています。

「○○ウイルスが、上気道の粘膜細胞を傷め付け、その部位に常在的に住んでいる××菌が病原性を発揮して上気道炎の症状を引き起こすに至る」と言う多因性が、風邪の実態を更に曖昧なものにしているのだと思われます。

人間の風邪とワンコに出現した症状それぞれの原因微生物を特定するためには、ウイルスや細菌を血液や喀痰などから分離培養し、種を同定の上、遺伝子レベルの同一性を調べる必要があり多額な検査費用がかかりますので、わざわざ調べる酔狂な獣医さんは多分いないと思います。少なくとも私はしませんね。
インフルエンザの話題についても事欠きません。

米国フロリダから、「グレーハウンドの犬舎で重症の呼吸器疾患が流行し、病巣からH3N8ウマインフルエンザウイルスが検出され、ウマのインフルエンザがイヌに感染したことが確認された」との発表があったのは昨年の今頃のことでした。

その後の研究から、H3N8ウマインフルエンザウイルスのイヌからイヌへの伝播が生じていることが証明され、動向が注目されています。これまで、皆さんに「イヌはインフルエンザウイルスには感染しません」とザックリ説明してきましたが、この「常識中の常識」が覆されたと言う意味で、私には少なからずショッキングな出来事です。

ところで、インフルエンザウイルスの基礎研究では日本が世界をリードしていることをご存知ですか?

それも、H大学獣医学科(微生物学教室)のK教授を中心とする若い獣医師たちの地道な研究が高く評価されているのです。
彼らの研究で「鳥インフルエンザ」に限らず全てのインフルエンザウイルスの起源は北極地方の水鳥にあることが明らかにされました。

鳥インフルエンザは本来、ニワトリなど鳥類の病気ですが、東南アジア各国や中国では、ネコやヒトの感染例が複数報告されています。

このウイルスがヒトに感染した場合、私たちがイメージするインフルエンザとは別次元の病原性を発揮し、主として肺炎など呼吸器系に致命的なダメージを受ける可能性があるそうです。人獣共通伝染病であり、公衆衛生上の問題です。

今朝、愛犬のこーちゃん散歩の途中で、カラスがムクドリの死骸を食べているのを目撃しました。まさか、ムクドリの死因が鳥インフルエンザではないと思いますが・・・。

今日では病原性がさらにパワーアップしたH5N1型ウイルスの大流行の兆しがあるとWHOや厚生労働省が盛んに警告しています。

現段階では鳥から人間へのH5N1型ウイルス感染が証明されているだけで、ヒトからヒトへの感染(これが起こると「新型インフルエンザウイルス」と呼ぶようになる)は認められませんが、変身が得意技のインフルエンザウイルスですので、油断できません。
「語源由来辞典」によりますとインフルエンザは、「星の影響」を意味するイタリア語「influence」に由来するそうですね。
昔のイタリアでは、この病気の原因が解らず、占星術師などにより惑星の並びによるものと考えられていたことによるそうです。

この冬、最も注意を要するのが、俗に「お腹の風邪」と呼ばれるノロウイルスによる伝染性胃腸炎です。
既に日本各地の保育園や養護施設さらには旅館ホテルでの発生が相次ぎ、最近の25年で最悪の状況とのことです。
嘔吐・下痢、発熱などが主徴で重症化する症例は稀とのことですが、高齢者や抵抗力のない病人に感染すると危険だそうですので、油断は出来ません。

ノロウイルスは小型球形ウイルスに属するウイルスで、猫伝染性鼻気管炎の原因の一つになるカリシウイルスのごく近い親戚です。
幸い、ヒト⇔ニャンコ間でのこれらウイルスの感染は問題になっていないので一安心。表題に「ご用心」と書きましたが、一体全体どう用心すれば良いのでしょうか?
私なりに考えてみました。
① 衰弱した野鳥に気付いたとして、何とか助けてあげたいのは山々ですが、しばらくは「君子危に近寄らず」の態度を取る。お子様にも徹底。
② インコなど飼い鳥に異常が見られたら、餌の口移しは避ける。早めに動物病院へ。
③ 今年のインフルエンザワクチンを接種し、うがいや手洗いなど例年以上に励行。(決して無駄ではありません)
もっと勉強してまた情報発信します。

ジメジメ ジトジト カビの季節にご用心!!

ジメジメ ジトジト カビの季節にご用心!!
ジメジメ ジトジト カビの季節にご用心!!

ペットには、予想外のトラブルが起こることがあります。でも、飼い主さんが気をつけてあげることで防げることがほとんどです。このページでは、大切な家族であるペットを守るための情報をお届けいたします。
沖縄では既に入梅。関東地方にも、うっとうしい梅雨入りが迫ってきましたね。
この季節にペット君達の健康管理上、ご留意頂きたいことの一つにカビ(真菌)による皮膚病があります。人間では、AIDSの末期など、免疫力が極度に低下した状態の患者さんの内臓に真菌が繁殖する深在性真菌症があり、これは多くの場合致命的です。ペットの場合には、被毛や皮膚にカビが感染して起こる表在性真菌症(皮膚真菌症)が重要であり、ジメジメ、ジトジトのこれからのシーズンに多発します。なにしろカビですからね。ワンコ・ニャンコはもちろん、ウサ吉君にもハム太郎にもフェレットにも何にでも起こります。人間に起こると「水虫、インキンタムシ」ですね。ペットから人への感染が見られ、動物達と同居する場合の衛生上の問題点になります。
でも、オトーサンの水虫がペットにうつるケース(そうとしか考えられない)も結構多いことを指摘しないと、動物達にとって不公平になると思います。
原因になるカビ(病原性真菌)には約10種類ありますが、白癬菌(トリコヒートン属)とミクロスポルム属、カンジダ属がペットの真菌症では頻度において重要です。以下に、症状、検査・診断方法、予防、誘因、治療方法についてまとめます。
症状
・激しい痒み
・脱毛(しばしば円形)を伴う皮膚炎
・かさぶた
検査・診断方法
・蛍光ランプでカビの発光をチェックする
・培養検査で原因真菌を検出する
・皮膚の症状を良く観察する予防
・清潔(絨毯の掃除機がけ、寝床のクッションなどを日光消毒)
・良くブラッシングし、ふけや余分な毛を落とす
・部屋の換気や通風、湿気に気をつける
なりやすい動物
・栄養状態の悪い仔猫
・仔犬
・病気などで体力
・免疫力が落ちた動物
治療方法
・バリカンでサッパリ
・薬用シャンプーで徹底的にシャンプー
・薬物療法(飲み薬、注射、外用)深刻な病気ではありませんが、いやな侮れない病気です。ご不明な点がありましたら、何なりとご質問ください。

飼い主の皆様へ:虫さされにご用心!!

夏から秋に向かうこの時期にムシ出来ないのが、ムシさされです(面白くないから、座布団1枚取っちゃって!!)。飼い主さんが「虫さされ」に気付く場合は稀で、大抵は、「突然ギャンと鳴いて、びっこをひいている」とか、「顔がいつもの倍ぐらいに腫れて、お岩さんになった」とおっしゃるケースが多く、外傷?感染?と診断に迷うことがしばしばです。とりわけ、アシナガバチ、スズメバチはこの時期に、攻撃性を増していて毎年1件は「ハチの一刺し騒ぎ」が発生します。
体表を良く調べ、刺し跡(針が残っている)の存在により診断します。
刺し跡が見つからない場合でも、状況証拠(近くに蜂の巣があるなど)が揃えば、「ハチ刺しの疑い」として、治療します。ハチの仲間は黒など暗い色を判別してそこに攻撃する特徴がありますので、フレンチブルなどブチ模様のワンコは白い部分ではなく、黒い毛が生えている部分や眼の付近、鼻先がさされる場合が多いです。「治療」としては、針が皮膚に残っている場合には周りの皮膚ごと抉り取ることを優先します。ハチ毒の成分はヒスタミン類、セロトニン類、キニンなどいわゆるケミカルメディエーターの仲間で、激しい痛みと炎症を起こします。
急性・重篤のアレルギー所見(アナフィラキシーショックや蕁麻疹など)がなければ、抗ヒスタミン剤やステロイドの軟膏や内服薬を使います。アナフィラキシーショックの徴候を示す時には、救急対応となり、昇圧剤、ステロイド剤などの静脈注射、気道確保した上での酸素吸入が必要になります。ハチ毒の場合、24時間以内に大体症状が治まりますので、それ以上症状が継続するようだと別の原因を考慮します。
なお、過去にハチに刺されたことがあるワンコが再び刺されてしまった場合にアナフィラキシーショックに陥る確率が高いので、その確認をシツコクお訊ねすることになります。ところで、みなみ台周辺はほんの数年前まで雑木林や沼地が広がっていましたので、今でもムカデが結構生息しています。
それも、オオムカデ目のトビズムカデ(「頭が鳶色のムカデ」の意味)という、体調12cmを超えるジャンボサイズが普通にお散歩しています。トビズムカデ君は、昼間は草むらや石の下にじっと潜んでいて、暗くなると昆虫などを捕食する夜行性ハンターです。
眼は殆ど見えない代りに、敏感な触覚を持っていて、素早く歩き回って昆虫を捜し、鋭いハサミ型の毒針つきの口で捕食します。夜のハンティングに際し、家の中に入り込み人や犬に触れると(無意識に振り払う瞬間)、咬み付かれ、毒が注入されるそうです。
傷を良く見ると3mmぐらい並んで、2ヶ所の咬み跡があるのでそれと分かります。
ムカデ毒の成分はハチ毒と殆ど同じで、症状、治療法も同様です。ただ、体の大きさに比例して毒の量も多く、咬まれた皮膚周囲が潰瘍化したり、リンパ節が腫れることもあるそうです。「予防」と言いましても「君子 危うきに近寄らず」で、

① ハチの場合には蜂の巣の近くはお散歩コースから外すこと、蜂の巣は(出来ればプロに頼んで)除去すること。
② ムカデの場合は2階まで上ってくることは、まずありませんので、不安がある場合(庭で大ムカデの死骸を見たことがあるなど)ワンコの寝室を2階に移すこと。
③ 万一刺されてしまった場合、早めに来院いただくこと。

くらいしか思い浮かびません。ご不明な点がありましたら、何なりとご質問ください。

飼い主の皆様へ:虫さされにご用心!!
飼い主の皆様へ:虫さされにご用心!!

皮膚病の一大原因。アカラス(毛包虫)症にご用心!!

皮膚病の一大原因。アカラス(毛包虫)症にご用心!!

アカラス?毛包虫?
変な名前ですよね。

ペットさんの皮膚病の一大原因になっているこの虫。
変なのは名前だけではありません。
コヤツは姿かたちも、生態も、とっても変な生き物なのです。

アカラスってどんな生物なの?
分類学的には、節足動物門、クモ綱、ダニ目、ニキビダニ科、ニキビダニ属に属します。
アカラスは云わば「あだ名」で、イヌのアカラスの和名はイヌニキビダニです。
ニキビダニ属は全て寄生生活をおこない自由生活を行うものはないそうです。
ニキビダニの棲家(寄生部位)は、哺乳類の皮膚の下。
皮脂腺と言う、皮膚表面に脂肪分を供給するトンネル状の組織と毛根を包む袋(毛包)の中です。

そこに棲み付くアカラスの体はトンネルに棲むのに適するように「いもむし」型で、皮脂腺から分泌される脂肪分や細胞のかけらを食べて暮らしています。

皮脂腺内に体を固定しやすいように筍の節のような出っ張りがスリップ止めの役割をしています。

成虫でも体長0.2‐0.3mmと小さく、肉眼では見えません。
ダニの仲間なので、足は4対8本。
でも、ほとんど移動しないので、芋虫の足程度の痕跡を留めるだけ。

今、地球に棲んでいる哺乳類は4000種あまりとされていますが、ニキビダニ属には5000もの種が存在するそうです。
ものスゴイ多さですよね。
1種類の哺乳類に複数の種類のニキビダニが寄生していることになります。
ビックリ。

もちろん、人間にもニキビダニは普通に寄生しています。
なにしろ、人間のにきびを潰して出てくる皮脂の中から発見されたことが「ニキビダニ」の名前の由来になっているくらいですから。

意外と潔癖なヤツで、ヒトに寄生するニキビダニ(Demodex folliculorumとDemodex brevis)は人の皮膚にしか、イヌに寄生するアカラス(Demodex canis)はイヌの皮膚にしか棲めません。

ですから、イヌのアカラスがヒトに感染することはないので、ご安心を。

アカラスの生態は?どうやって感染するの?
ニキビダニは卵→幼虫→成虫と成長し、孵化後2週間位で成虫になり、成虫の寿命は2ヶ月程度。

住処の皮膚の下から皮膚表面に出るのは、成虫が交尾する時と、幼虫(第2期幼虫)が他の宿主(同じ宿主のほかの部位へも)に感染する時だけです。

人間もワンコも生まれたばかりのときは、アカラス・ニキビダニは持っていませんが、母親との接触(授乳行動など)に際し、第2期幼虫が赤ちゃんの皮膚に侵入・感染すると書かれています。

従って、若犬のニキビダニ寄生部位は、口の周囲やホッペなど乳房に密着する場所が多いのです。

アカラスが寄生すると必ず皮膚病症状が出るの?:
とてもムズカシイ問題です。
全く健康なイヌの皮膚からアカラスが検出されることもあります。
「皮膚はある程度まではアカラスと共存することができるが、寄生数が多くなったり、皮膚の状態が悪くなった時に、悪さ(病原性)を発揮する。」
と考えるのが妥当でしょう。

どんなペットが侵されるのか?:
全ての哺乳類ペットがアカラスの宿主(それぞれ別の種類のニキビダニ)になります。
私の印象では、ワンコ>フェレット>ハムスター>ニャンコと言った順にアカラス症(皮膚病)を発症しやすいと感じています。

アカラス症の症状は?:
症状は本当に千差万別。
かゆみもなく、丘疹も作らず口唇部に脱毛のみ示す程度のものから、全身の皮膚が爛れてしまい、栄養障害・貧血をきたす激しいものまであります。
症状の強さは、アカラス寄生数に概ね相関しますが、宿主側の状態・体質(例えばアレルギー体質、脂漏性体質、皮膚の不潔など)も大きく関係するのです。
前述のとおり、病変部は初期には顔周りが多いですが、徐々に全身に広がります。
顔周りに次いで、指の間、脇腹、背筋などは検出頻度が高い部位です。

皮膚疾患は梅雨時から夏に悪化し、冬期は改善する傾向があるのですが、アカラスが関与しているCaseでは冬でも頑固に症状が継続する場合が多いです。

診断はどうするの?:
症状のある部位の皮膚を掻き削り皮膚の角質層を薬液で溶かした後、顕微鏡で調べます。
下の写真に示す、特徴的なアカラス虫体、あるいは虫卵を検出することにより診断します。

治療方法は?:
従来、アカラスを確実に殺す薬はなく、とても治療しにくい病気でした。
最近になって、イベルメクチンと言う薬剤が効果を有することが分かり、当院でもこれを第一選択にしています。
この薬はフィラリアの予防薬として広く使われているので、ご存知の方も多いと思います。

この病気の問題点について:
・診断に関する問題点:掻き削った皮膚を顕微鏡で調べるのですが、実際には寄生があるのに検出できない診断ミス(faults negative)もあり、繰り返し検査が必要です。
・治療薬に関する問題点:イベルメクチンは、アカラスに対し良く効きます。
殆ど特効薬と言って良いほどです。
但し、アカラスの治療に使う時のイベルメクチンの投与量はフィラリアを予防する時の投与量の実に50倍も必要で、しかも1か月以上連続投与する必要があります。
また、公的にはアカラスの適応症(承認)を取得していないのです。
その理由は、「ワンコによっては」死亡につながるような重大な副作用を起こすことがあるからです。
「ワンコによっては」と書いた様に、殆どのワンコには安全に使えるのですが、一部のワンコ(MDR1 遺伝子欠損)では、このお薬が脳神経に高濃度で移行してしまい、ケイレンなどの症状を起こすことがあるのです。
ですから、この薬を使う時には、慎重にならざるを得ません。ごく少ない量から始めて、様子を見ながら増量していく方法で行います。
少ない量で、副作用が起きないワンコでは、増量しても副作用が起きる可能性は極めて低いです。
・治療期間の問題点:イベルメクチンはアカラスの成虫は殺せますが、卵や幼虫には効きません。
成虫が死滅すると皮膚症状はとても良くなりますが、ここで治療を中止すると、元の黙阿弥になってしまいます。生き残った卵や幼虫が成虫になり悪さを始めるからです。

ご不明な点がありましたら、何なりとご質問ください。